こんにちは、kenzoです。
突然ですが、皆様の所属する会社はどんなカルチャーがありますか?
個人的な肌感覚ですが、この質問に的確にこたえられる方は中々いないのではないかと思っています。
本日紹介する『カルチャーモデル 最高の組織文化の作り方』は、自社のカルチャーを言語化する大切さから言語化のプロセス、言語化後の社内への浸透、運用までを大変丁寧に解説してくれている本です。
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それでは早速中身を解説していきます!
著者の紹介
まずは著者の紹介から。
本書の著者は唐澤 俊輔さんです。
本人執筆のnoteに経歴が載っておりましたのでここでは引用させていただきたいと思います。
唐澤 俊輔(からさわ しゅんすけ)
大学卒業後、日本マクドナルド株式会社に入社し、28歳にして史上最年少で部長に抜擢。経営再建中には社長室長やマーケティング部長として、社内の組織変革や、マーケティングによる売上獲得に貢献、全社のV字回復を果たす。
株式会社メルカリに身を移し、執行役員VP of People & Culture 兼 社長室長。採用・育成・制度設計・労務といった人事全般からカルチャーの浸透といった、人事・組織の責任者を務め、組織の急成長やグローバル化を推進。
その後、SHOWROOM株式会社でCOO(最高執行責任者)として、事業成長を牽引すると共に、コーポレート基盤を確立するなど、事業と組織の成長を推進。
現在は、Almoha LLCを共同創業し、組織開発やカルチャー醸成のコンサルティングおよび、組織開発のためのサービスやシステムの開発に取り組む。グロービス経営大学院 客員准教授。
出所:note
マクドナルド→メルカリ→SHOWROOMというキャリアは相当ユニークですよね。
私は、本書の内容からずっと人事畑を歩んできた人かと勝手に思っていました。
しかし、経歴を整理していくと、実は元マクドナルドの最年少マーケティング部長であったことが分かりました。
きっと唐澤さんの人事だけに留まらない多様な経験が、多面的な角度からカルチャーを理解する本書のようなアウトプットにつながっているのだと推察します。
本書のキーメッセージ
冒頭で著者は下記のように提言しています。
私の個人的見解ですが、本書のキーメッセージはここにあると思っています。
この本で私が提言するのは、カルチャーを言語化し、可視化し、それを社内外に浸透させることで、企業と社員の期待値ギャップを減らし、誰もが自分にとって「いい会社」を、見つけられる「カルチャーモデル」を推進すべきだということです。
「カルチャーモデル」より抜粋
ではそのカルチャーモデルとはどのようなものなのか。
もう少し内容を順を追ってみていきましょう。
「いい会社」とは?
「いい会社」という言葉は、非常に抽象的な言葉です。
昼夜関係なく自己成長を見据えてバリバリ働きたい人と、
安定的に働き終業時間外は自分の趣味に没頭したい人では
「いい会社」の定義は全く異なるでしょう。
本書では「いい会社」とは、「社員が期待する環境と会社が提供する環境のギャップが少ない会社」と定義しています。
つまり、自社への入社を検討する社員の期待値を適切に設定し、ギャップを解消するためにカルチャーの言語化が必要ということです。
![](https://zukai-de-rikai.com/wp-content/uploads/2021/02/スライド1-2.jpg)
![](https://zukai-de-rikai.com/wp-content/uploads/2021/02/スライド2-1.jpg)
ビジネスモデルとカルチャーモデルの関係
通常、企業はビジョン・ミッション・バリューといった企業の存在意義や組織としての価値観から一貫したビジネスモデルを組み立てます。
本来であれば、これと同様にビジョン・ミッション・バリューから一貫したカルチャーモデルを組み立てる必要があります。
つまり、カルチャーモデルの位置づけは、企業活動全体から見たときにビジネスモデルと同等の位置にあると言えます。
例えば、ビジネスモデルを考えた後には、そのモデルの実行フェーズであるオペレーション、そしてその先には「カスタマーエクスペリエンス(CX):顧客体験」があります。
同様に、カルチャーモデルを構築した後には、そのモデルの実行フェーズにピープルマネジメント、そしてその先には「エンプロイーエクスペリエンス(EX):従業員体験」があります。
企業構造を成り立たせるためにはこの2つのモデルを両輪で回す必要があります。
![](https://zukai-de-rikai.com/wp-content/uploads/2021/02/20210227_カルチャーモデル縦版.jpg)
カルチャーを定義する
では、カルチャーモデルの定義づけの仕方について見ていきましょう。
ここで登場するのがマッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱した7Sフレームワークです。
7Sは、エクセレントカンパニーに共通する要素を7つ挙げ、それらが相互に補完し、高めあいながら企業活動を行っているという、組織運営に関するフレームワークです。
通常の7Sの要素は次の通り表されます。
- Strategy:ストラテジー(戦略)
- Structure:ストラクチャー(組織構造)
- System:システム(制度)
- Shared Value:シェアドバリュー(共通の価値観・理念)
- Staff:スタッフ(人材)
- Skill:スキル(能力)
- Style:スタイル(経営スタイル・社風)
一方、カルチャーモデルを7要素で表す場合は次のフレームワークを用います。
- Stance:スタンス(組織としての在り方)
- Shared Value:シェアドバリュー(共通の価値観・理念)
- Structure:ストラクチャー(組織構造)
- System:システム(制度)
- Staff:スタッフ(人材)
- Skill:スキル(能力)
- Style:スタイル(経営スタイル・社風)
基本的には、ほとんど一緒ですが、通常の7Sモデルの一番上に「Strategy:ストラテジー(戦略)」が入りますが、カルチャーモデルの場合は一番上に「Stance:スタンス(組織としての在り方)」という要素が入ります。
スタンスについてはこの次の項でもう少し詳しく見ていきたいと思います。
![](https://zukai-de-rikai.com/wp-content/uploads/2021/02/スライド3.jpg)
経営スタンスの4象限
カルチャーモデルにおける7Sの一番上には「Stance:スタンス(組織としての在り方)」が来るということを上述しました。
スタンスとは、自社がとるカルチャーの方向性を決めることで、主に経営のリーダーシップスタイルの在り方によって定義されるものです。このスタンスは「経営スタンス」と呼ばれ、カルチャーモデルの中核的な存在となります。
本書では、さまざまな企業のカルチャーを検証したうえで、経営スタイルを変化志向or安定志向、中央集権型or分散型のマトリクスを用いて次のような4象限に分類しています。
![](https://zukai-de-rikai.com/wp-content/uploads/2021/02/20210227_カルチャーモデル-2.jpg)
①カリスマリーダー経営(変化志向×中央集権型)
一人のカリスマが常に変化を起こしながら組織が成長していく。
②チームリーダー経営(安定志向×中央集権型)
個に依存せず、経営陣がチームで意思決定し、全員の力を結集し成長を進める。
③複数リーダー経営(安定志向×分散型)
子会社別、事業別、地域別などに分散して組織運営し、各責任者に権限を委譲する。
④全員リーダー経営(変化志向×分散型)
ビジョン・ミッション・バリューで大枠の方向性だけ規定し、あとは個人に任せる。
この経営スタンスはどれが正解というものではありません。自社の方向性を考え、経営者・経営陣がしたいと思うものを選択する必要があります。
経営スタンスを最初に明確化することが、目指すカルチャーを作ることの大事な一歩目となります。
カルチャーをつくる5段階プロセス
では、具体的にカルチャーモデルはどのような手順でつくっていけば良いのでしょうか。
本書ではカルチャーをつくるプロセスを次の5段階にまとめています。
(1)現状のカルチャーを棚卸する
まず企業のカルチャーを棚卸し、スタンスがどの類型に近いのか、実態把握に取組みます。
例えばここで経営スタンスと人事制度のずれなどが見えてくるかもしれません。そのような改善すべき点や検討すべき点を洗い出すのが、この段階で重要なこととなります。
(2)ビジョン・ミッションを設定する
ビジョン・ミッションは社会にどんな価値を提供するかを示すものであるため非常に重要です。
カルチャーの具体的な議論に入る前にこれらの設定が必要です。
(3)カルチャーの方向性を決める
このステップは前述した経営スタンスの4象限を決め、実際に7Sモデル全体を定めていくステップとなります。前ステップで定めたビジョン・ミッションから経営スタンス、7Sの整合性が取れていることが必要です。
(4)カルチャーを言語化する
どんなカルチャーを体現するのか、具体的に言語化するステップです。ここでは7Sとの整合性を取りながら、制度や採用方針なども定めていきます。
(5)カルチャーを浸透させる
言語化したカルチャーを浸透させる実行のステップです。この浸透がカルチャーモデルの肝となります。
![](https://zukai-de-rikai.com/wp-content/uploads/2021/02/20210227_カルチャーモデル 5段階プロセス.jpg)
5番目のカルチャー浸透については、次の項でもう少し深掘りして説明したいと思います。
カルチャー浸透のための5A理論
さて、ここまででカルチャーをつくる5段階プロセスを紹介いたしました。
ここではSTEP5のカルチャーを浸透させるためのプロセスを見ていきたいと思います。
繰り返しとなりますが、このステップがカルチャーモデルの肝であると著者は述べています。
それは、このステップがなければせっかく言語化したカルチャーも「絵に描いた餅」になってしまい、うまく機能させることができないためです。
ではカルチャーの浸透はどのように進めていけば良いのでしょうか。
ちなみに本書ではこの段階のことを「ピープルマネジメント」と称しています。
これは実際の事業でいうところの「オペレーション」のレイヤーにあたります。
つまり、実際の運用をどうしていくか、ということですね。
ここではコトラーが提唱したマーケティングの5A理論を用いることを推奨されています。
5A理論とは「マーケティング4.0」における顧客に支持されるために重要な5つのプロセスであると論じられています。
顧客は、「認知→訴求→調査→行動→推奨」のプロセスを行き来し、購買するプロダクトやサービスを決定し、それが気に入れば他の誰かに推奨する、というものです。
ではこの5A理論がカルチャーモデルのピープルマネジメントにおいてどのように活用できるのでしょうか。
ここからはピープルマネジメントにおける5A理論の活用の仕方を見ていきましょう。
まず前提としてピープルマネジメントでは5A理論における「顧客」を「従業員」または「今後従業員になる可能性のある求職者」に置き換えて考えます。
(1)認知(Aware) カルチャーのタッチポイントをつくる
このステップでは、言語化されたカルチャーを、至るところで目に触れる機会(タッチポイント)をつくります。
具体的にはカルチャーを言語化した社内グッズの普及や、会社エントランスにおける理念や社訓の提示などが考えられます。
(2)訴求(Appeal) 共通認識を醸成する
認知だけではカルチャーに共感させることはできません。
カルチャーに対して共感や好感を得るためには、カルチャーを一人ひとりが解釈し、共通認識を醸成することが重要です。
このステップにおける実施事項としては、ワークショップなどを活用した「カルチャーについて議論する場」の醸成が考えられます。
(3)調査(Ask) すぐ聞ける・調べられる状態をつくる
認知、訴求のステップを経ることで従業員は、カルチャーへの理解を深め、自分が働く場所としてふさわしいのか、働き続ける環境として優れているのかを検討することになります。
そのため、従業員が気になったときに「すぐ聞ける・すぐ調べられる」状態にしておくことが必要です。
具体的には、新入社員に対する「メンター制度」の確立、オウンドメディア活用によるコミュニケーションの醸成などが考えられます。
(4)行動(Act) 日々の行動や言動を促す
このステップでは誰かが旗振り役となって従業員に対してカルチャー浸透を促進します。
一般的にカルチャー浸透で大きな役割を担うのは人事部門となりますが、人事部門だけで担当するのは限界があります。
ここでは、各現場マネージャーが率先してカルチャーを浸透させる役割を担うことが必要と言われています。
(5)推奨(Advocate) 他者に自分の会社を薦める
5A理論を活用したピープルマネジメントの最後のステップは「推奨」です。
従業員は、自ら大切にする価値観と企業のシェアドバリューが重なる部分が大きく、企業のカルチャーに共感し、また自らの行動が組織内で評価されていると実感できたとき、ロイヤルティが高まり、自社のことを他者に推奨したくなります。
通常多くの企業で会社に関することをSNS発信することを禁じていますが、
本書においては、自社のカルチャーを「強み」に変えたうえで、従業員のSNS発信を積極的に認めるべき、と主張しています。
![](https://zukai-de-rikai.com/wp-content/uploads/2021/02/20210227_カルチャーモデル_5A理論.jpg)
以上がカルチャーモデルとピープルマネジメントの全体像となります。
当然のことながら、本書で紹介されていることは1回やって終わりではなく、時代の変化に応じてPDCAを回し続けなければいけません。
時には一度言語化されたカルチャーを再定義する必要も出てくるかもしれません。
終わりに
今回は、唐澤 俊輔さんの『カルチャーモデル 最高の組織文化の作り方』を特集いたしました。
この記事では概要を紹介したに過ぎません。
実際の書籍では、各ステップの具体的な方法論を含めてカルチャー改革のために必要な情報が数多く載っています。
もともと私がこの本を読んだきっかけは、自分の所属する会社の組織風土を改善したいという想いがあったためです。まずは、実際にこの本に書かれていることを愚直に実行することが必要だな、と痛感しております。
自社の雰囲気に違和感を感じる、従業員間のコミュニケーションが希薄、など組織に課題を感じている人がいたら是非一度読んでみることをおすすめします。
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最後までお読みいただきありがとうございました!
また次回のブログ記事でお会いしましょう!
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