図解『地頭力を鍛える』

ビジネス書

こんにちは、kenzoです。

今回解説するのは細谷功さんの「地頭力を鍛える」です。
有名な本なので読んだことがある人も多いのではないでしょうか。

本書が最初に出版されたのは2007年。この記事を書いているのは2021年5月ですから決して最新の本というわけではありません。
しかしながら、本書の内容自体は全く色褪せておらず、現代を生きる日本人が知るべき内容が詰まっている本であると思います。

それでは今回も図解を用いながら本書の概要を紹介していきます。

地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」 [ 細谷 功 ]

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感想(36件)

著者の紹介

それではいつもの通り著者の紹介から。

細谷 功(ほそや いさお)
ビジネスコンサルタント、著述家
1964年、神奈川県生まれ。東京大学工学部卒業後、東芝を経てアーンスト&ヤング・コンサルティング(クニエの前身)に入社。2009年よりクニエのマネージングディレクター、2012年より同社コンサルティングフェローとなる。問題解決や思考に関する講演やセミナーを国内外の大学や企業などに対して実施している。
著書に『地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」』、『アナロジー思考 「構造」と「関係性」を見抜く』『問題解決のジレンマ イグノランスマネジメント:無知の力』などがある。

東洋経済ONLINE 著者プロフィール

実はこのブログで細谷さんの著書を取り上げるのは初めてではありません。
第1回目の「会社の老化は止められない」の著者も細谷さんでした。

興味がある人は以下の記事もご覧ください。

本書のキーメッセージ

本書の冒頭で著者は次のように述べています。本書のキーメッセージとして紹介させていただきます。

「地頭力を鍛える」というのはダイヤモンドの原石を磨いて輝きを出すようなものである。どんな原石でも丹念に磨けば必ずある程度は光り輝くようになるし、またどんな人も輝くべき原石の要素を有しているのである。

東洋経済新報社「地頭力を鍛える」

著者曰く地頭力は才能によるものだけではなく、後天的に訓練で鍛えることが可能であるということです。

ではその地頭力を鍛えるためにはどんな考え方が必要か、ということを紹介しているのが本書となります。

「地頭が良い」とは?

それではここからが本題です。

まず先ほどから何度も述べている「地頭力」を含めて「頭が良い」というのはどのような状態を指すか考えてみましょう。

本書では冒頭で「頭の良い人」を次の3つに分類しています。

①物知り
知識が豊富
例:クイズ王

②機転が利く
対人感性が高い
例:コメディアン、司会者

③地頭が良い
論理的思考能力が高い
例:数学者、プロ棋士

すでに皆様がご存知の通り、これら3つの能力はいずれも仕事や日常生活を過ごすうえで必要不可欠な能力です。

しかしながら、「物知りであること」や「機転が利くこと」だけでは現在のような情報社会においてあまり優位性を保てなくなっていることは、この記事を読んでいる皆様も実感するところではないでしょうか。

だからこそ、環境変化が激しく未知の領域で問題を解決する能力が求められる現代においては、論理的思考能力が高いこと、つまり地頭力が良いことが重要であり、日本人はもっとこの能力を高めるべきであると著者は述べています。


地頭力の3つの要素

「地頭力」の定義である論理的思考能力をもう少し具体的にみていくと、
「地頭力」は次の3つの構成要素に分解できます。

①結論から考える仮説思考力

②全体から考えるフレームワーク思考力

③単純に考える抽象化思考力

これら3つを一言で整理すると「結論から」「全体から」「単純に」考えることです。
この思考は業務多忙の中で良質なアウトプットを求められるビジネスマンが持つべき思考であるといえます。

では、これら3つの思考力についてもう少し詳しく見ていきましょう。

結論から考える仮説思考力

初めは仮説思考力です。

仮説思考力のポイントは以下の通りです。

①今ある情報だけで最も可能性の高い結論(仮説)を想定し、
②常にそれを最終目的地として強く意識して、
③情報の精度を上げながら検証を繰り返して仮説を修正しつつ最終結論に至る

上記は当たり前のような話ですが、できていない人が多いのが実状です。
物事を考えるときに、多くの情報を集めることに注力して必要以上に時間をかけすぎてしまうことはありませんか?

何かの結論を導き出すために情報が多いことは悪いことではありません。
ただし、あくまでも情報を集めることは手段でしかなく、どんな結論を導き出したいかを最初に明確に定めることが重要ということですね。

全体から考えるフレームワーク思考力

次にフレームワーク思考力です。

物事を考えるときに、どんなに優れた人であっても「思考の癖」が存在します。
フレームワーク思考はこの「思考の癖」を取り除くために知っておくべき思考です。

フレームワーク思考力は「全体俯瞰力」と「分解力」に分けられます。

全体俯瞰力は、文字通り起きている事象を全体図から考えるということです。
分解力は、何かを考えるときに全体からモレなくダブりなく切り分けて考える力です。

例えば会社の売上が低下した原因を考えるときに「営業担当者の努力不足」と決めつけてしまう人は全体俯瞰や分解ができていません。

このようなケースの場合、まず全体俯瞰力を活用して売上がいつと比べてどの程度低下したかを正確に把握します。
そして分解力を活用して、売上を「客数」×「客単価」に分解し、どちらに原因があるのかを検証します。(本来であれば客数も新規と既存に分けるなど細かい分類が必要ですがここでは割愛します。)

ここでは単純化のために非常に極端な例を挙げましたが、フレームワーク思考を活用することで、全体がどう分解され、どの部分の話をしているかを客観的に考え、「思考の癖」を取り払うことができるようになります

単純に考える抽象化思考力

3つ目は抽象化思考力です。

抽象化思考力の基本的なプロセスは以下の通りです。

①対象の最大の特徴を抽出して「単純化」「モデル化」した後に
②抽象レベルで一般解を導き出して、
③それを再び具体化して個別解を導きだす

やや分かりにくい気もするので、少し例をつくってみました。

例えば、あなたがペットとして犬を5匹買っていると仮定します。
うち1匹がお腹を空かせていることが分かりました。
あなたは「この1匹がお腹を空かせているのだからきっと他の4匹もお腹が空いているだろう」と餌を5匹に与えることとしました。
実はこの何気ない瞬間も抽象化思考が行なわれています。

つまり「犬1匹がお腹を空かせている」という事象から「犬全員がお腹を空かせている」と単純化し、
「犬がお腹を空かせているのだから餌を与える」という一般解を導き出し、
「全員に餌を与える」という個別解に落とし込んでいるのです。

生活レベルで落とし込むと知らない間に我々は抽象化思考を行っていることに気付くことができますが、
残念ながらビジネスの世界では、起きた具体的事象のみへのその場限りの対応が行なわれているというのが現状です。

地頭力を鍛える協力ツール「フェルミ推定」

ここまで地頭力の構成要素を見てきましたが、
それらの力を高めるにはどうしたら良いのか、というのが気になるところですよね。

著者も本書内で、これらの地頭力を向上させるには絶えず考える習慣をつけることが必要であると述べています。

では考える習慣をつけ地頭力を向上させるためにどんなツールを使えば良いのでしょうか。
そのツールとして本書で推奨されているのがフェルミ推定です。

突然ですが皆様は次のような質問をされたとき、どう考えますか?

「日本全国に電柱は何本あるか?」

日本にある電柱の本数を知識として持っている人はまずいないと思いますので多くの人が「こんなのわかりっこない」と匙を投げてしまいそうな質問です。

このような答えのない問いに対して論理的に思考し、妥当性のある結論を導き出すのがフェルミ推定です。

では本書に記載されている正解にたどり着くアプローチをご紹介します
※上記の例題を「どうしても自分の頭で解答プロセスを考えたい」という人については、自分の頭である程度考えてからここから下をお読みください。

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解法①日本全土の面積に対する単位面積当たりの電柱本数を抽出する、という解答アプローチを考える。
解法②日本全土を「市街地」と「郊外」に分類する。
解法③市街地における電柱配置を「50m四方に1本」、郊外における電柱配置を「200m四方に1本」と仮定する。この仮定に基づくと市街地では1㎢あたり400本、郊外では1㎢あたり25本の電柱があると考えられる。
解法④日本全土の中で「市街地」は2割、「郊外」は8割と仮定する。
解法⑤日本全土の大きさを30万㎢と仮定する。
解法⑥ここまで置いた仮定に基づいて計算を実行する。
市街地:30万㎢ × 0.2(市街地割合) × 400(市街地の単位面積当たり電柱本数) = 2,400万本
郊外:30万㎢ × 0.8(郊外割合) × 25(郊外の単位面積当たり電柱本数) = 600万本

2,400万+600万=3,000万本
(ちなみに日本の電柱本数は実際には約3,300万本だそうです。そのためこの推定がかなり正解に近いことが分かります。)
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実は、この解答フローの中に前半で紹介した「結論から」「全体から」「単純に」考える思考力を使う場面が散りばめられています。

まず、「結論から考える仮説思考」を用いて、「日本全土の面積に対する単位面積当たりの電柱本数を求めれば解答が出せるのではないか?」という解答アプローチを考えています

次に、「全体から考えるフレームワーク思考」を用いて、日本全土から考える全体俯瞰の視点、日本全土を市街地と郊外に分解しています。

そして、「単純に考える抽象化思考」を用いて、市街地・郊外それぞれの面積当たり電柱本数のモデル化、日本全土を30万㎢と単純化しています。

このように解答を導き出すプロセスを通して地頭力を構成する各能力が駆使されるため、フェルミ推定は地頭力向上に有用なツールであると言われています。

フェルミ推定について、紹介してみましたがいかがでしょうか?
「聞いてみたら単純」と思う人もいれば
「こんなの自分では到底できない」と思う人もいるかもしれません。
ただしフェルミ推定は解答の正否を確かめるものではありません、あくまでも論理的思考をするためのツールです。
つまり、導き出される結果ではなく解答を導き出すためのプロセスに大きな意味があると言えます。

もっとフェルミ推定を実践したい人へ

ここまで地頭力の構成、フェルミ推定の概要について解説しました。

ここまでを読んだ皆様の中に、フェルミ推定についてもっと多くの問題に挑戦したいと思う人も多いと思います。
本書は、あくまでも地頭力を鍛える重要性を説明した本のため、フェルミ推定の例題がたくさん載っているわけではありません

もっとフェルミ推定の実践をしたいという人向けにいくつか関連書籍のリンクを貼りますので、よろしければ読んでみてください。

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さて、いくつか書籍の紹介リンクを貼らせていただきましたが、
当然のことながらフェルミ推定の問題は自分自身で考えることも可能です。

何度も説明している通りフェルミ推定は正解のない問題がほとんどです。
身近にあるものに対して自ら問いを立て色々考える癖をつけるのも良いかもしれませんね。

例えば私kenzoが考えたものは次の通りです。
よろしれば皆様も少し考えてみてください!

問題:日本にペットとして飼われている柴犬は何匹いる?

以下、kenzoの解答プロセスです。
(あくまでもkenzoが3分で導き出したプロセスなのでクオリティは期待しないでください・・・。)

まず解答アプローチとして、「日本全国で犬が飼われている世帯数から犬種として柴犬が選択される割合」を考えてみたいと思います。

外を出歩いて10の家を通り過ぎると大体1世帯くらいは犬を飼っている家の前を通りますので「10世帯に1世帯は犬を飼っている」と仮定します。また様々な種類の犬を散歩している人とすれ違う中で大体10匹に1匹くらいが柴犬の感覚ですので「ペットとして飼われる犬種の1割が柴犬」と仮定します。

日本の人口は単純化のため約1億人とします。また世帯人数は1人世帯から多人数世帯まで数多くありますがこれも単純化のために1世帯平均を3人とします。すると日本の世帯数は3,333万≒3,000万世帯であると考えられます。

ここまでで計算するための材料はそろいました。それでは実際に計算してみましょう。

3,000万(日本の世帯数) × 0.1(犬を飼っている割合) × 0.1(犬種の中で柴犬が選ばれる割合)=30万匹

では実際に柴犬の数を見てみましょう。
令和2年の年間犬籍登録数によると登録されている柴犬の数は27,300匹≒3万匹です。
私が実施したフェルミ推定では実際の数よりも約10倍ほど柴犬が多い計算となりました。恐らく犬を飼う世帯割合と柴犬が選ばれる割合を調整すればもう少し正しい解答が導き出せたかもしれません。
(柴犬を愛するあまり、私には実際よりも多い柴犬が見えていたようです(^^ゞ)

終わりに

本日は細谷功さんの「地頭力を鍛える」を紹介させていただきました。

多くの人が指摘しているように、残念ながらこれまでの日本の学校教育は多くの事柄を暗記することが中心であり、知識を蓄えることに重きを置かれがちでした。

しかしながら、今後の社会を生き抜くためには、論理的に考える能力である「地頭力」を鍛えることは必須と言っても過言ではありません

そしてその地頭力を鍛えるためにフェルミ推定はかなり有力なツールであると言えます。

皆様もフェルミ推定にどんどん挑戦して地頭力を鍛えていきましょう

最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回の記事でお会いしましょう。

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この記事のライター
渥美 研司

1988年生まれ
2010年から旅行会社にて法人営業を経験。
2019年~2020年までは旅行会社子会社のシンクタンクに出向。
2021年以降、旅行会社本社にて新規事業開発に従事

独学での資格取得ノウハウや読書経験を活かし、多くの人に役立ちたいという想いから独学応援ブログを開設した。

保有資格:
中小企業診断士
総合旅行業務取扱管理者
TOEIC810点(2023年2月5日現在)
SEO検定4級

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