図解『失敗の本質』

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こんにちは、kenzoです。

まだブログをスタートして数カ月ですが、更新のペースが落ちてしまっています。ブログを始めた当初は週に1回のペースで更新したかったのですが・・・なかなか上手くいきませんね。

書評のメルマガを毎日発信している人もいるくらいですから私自身ももっと頑張っていきたいと思う次第です。

さて、本日はビッグタイトルとなる『失敗の本質』について特集したいと思います。言わずと知れた名著ですから知っている人も多いのではないでしょうか?

本書における主な題材は大東亜戦争(太平洋戦争)における旧日本軍ですが、多くの人が指摘しているように現在の日本組織にも大きく関連している内容です。ぜひこの記事で興味を持った人は本書も読んでみることをお勧めします。

ただし本書は非常に難解な本でもあるため本日の解説は本書とは別に出版されている入門編の内容も活用しつつお伝えしたいと思います。

なお、本書は大東亜戦争の是非を問う本ではありません。あくまで組織論的に日本軍の敗北の要因を分析している本ですので、戦争が正しかったかどうかという視点は一旦外して読んだほうが素直に学べると思います。

それでは詳しく見ていきましょう。

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本書のキーメッセージ

本書は、大東亜戦争における日本軍の敗北の組織的要因を把握したうえで、現代にも通じる日本組織の特性を分析しています。
本書の後半で述べられている内容をキーメッセージとして紹介します。

1つの組織が、環境に継続的に適応していくためには、組織は環境の変化に合わせて自らの戦略や組織を主体的に変革することができなければならない。こうした能力を持つ組織を、「自己革新組織」という。日本軍という1つの巨大組織が失敗したのは、このような自己革新に失敗したからなのである。

『失敗の本質』より

皆様がすでにご存じの通り、日本軍は大東亜戦争で大きな敗北を喫しました。敗北要因を一言で表すなら「環境変化に合わせて戦略を立てられる組織ではなかったから」ということです。

それではもう少し詳しく見ていきましょう。

日本軍敗北の主な要因

前述したとおり、大東亜戦争当時の日本軍は、環境変化に合わせて戦略を立てられる組織ではありませんでした。

ではなぜそのような組織になってしまっていたのでしょうか。本書では日本軍が変革できなかった要因をかなり細かく分析していますが、本記事ではいくつかの主な要因に絞ってご紹介したいと思います。

要因①曖昧な戦略

どんな作戦であっても明確な戦略がなければ勝利にたどり着くことはできません。
すごく当然のようなお話ですが、日本人は物事の全体を通した戦略、すなわちグランド・デザインを描くことが苦手な傾向があります。

日本軍においても戦略が曖昧であったことを要因に、本部と支部間で認識相違が生まれたり、無駄な戦闘を繰り返し戦力を浪費してしまうことが発生していました。

要因②空気の支配

日本軍の戦略策定は一定の原理や論理に基づくというよりは、情緒や空気が支配する傾向にあったようです。

大東亜戦争においても、冷静に考えれば失敗すると分かっている作戦であっても反対意見を述べる者は「戦争の士気を下げる弱気な者」とみなされてしまうことから、誰も止めることができない空気が醸成されてしまい、案の定作戦決行後大敗北を喫してしまうことが何度もありました。

要因③学習の軽視

3つ目は学習の軽視です。
組織学習には「シングル・ループ学習」と「ダブル・ループ学習」の2つがあります。

シングル・ループ学習は、目標や問題の基本構造が自らの想定と違っている、という疑問を持たない学習スタイルです。
ダブル・ループ学習は、想定した目標と問題自体が違っているのではないか、という疑問・検討を含めた学習スタイルを指します。

日本軍はダブル・ループ学習ができる組織ではなかったと言われています。
つまり、既存の内容を覚える知識学習については得意としながらも、全く違う新しい条件が発生したときにどのように考えるかなどを考えることは非常に苦手であったということです。

ただ苦手であっただけならまだ良いのですが、日本軍は自分たちの置かれた環境でしか物事を考えることができなくなってしまい、結果的にダブル・ループ学習を軽視することとなってしまいました

現代日本組織にも通じる日本軍組織の特徴

さてここまで大東亜戦争における日本軍の敗北要因を見てきました。
前述した要因は、皆様が所属する組織などでも同じようなことが起きていませんでしょうか?

ここでは現代の日本組織にとっても決して他人事ではない日本軍組織の特徴をいくつかの面から見ていきたいと思います。

戦略 -一貫して偏ったパラダイム-

日本軍は陸軍、海軍それぞれで偏った戦争論のような「ものの見方」(パラダイム)が存在していました。陸軍は「白兵銃剣主義」、海軍は「艦隊決戦主義」と言われるものです。

これらのパラダイムは日清戦争や日露戦争などの大東亜戦争以前の戦争において日本軍が勝利した事によって形成されました。

しかし、従来とは異なる戦略を持った相手が現れた際、そのパラダイムを変革することができなかったと言われています。

組織構造 -他部門を統合する管理本部がない-

日本軍は、陸軍と海軍を抱えており、各々の立場で戦略や戦術を練っていましたが、彼らを統合して管理する本部体制が敷かれていませんでした。

その結果として、陸軍と海軍でうまく連携をとることができずに、作戦を失敗させてしまうことが何度も起きてしまいました

管理システム -年功序列の昇進と暗記中心の教育システム-

日本軍の昇進は、ほとんどが年功序列で決められていました。驚いたことに作戦を大きく失敗させた指揮官であっても年齢が上がれば昇進することができてしまっていたようです。そのため各作戦における緊張感の低下にもつながっていました。

また教育システムは、教科書やデータに書かれている内容の暗記が重視され、物事を思考する能力などが養われることはありませんでした。これでは、何が起こるか分からないような状況下で十分に力が発揮されるはずがありません。

自己革新組織として検討すべきこと

ここまで日本軍の組織特性を見てきました。
前述のように現在皆様が所属されている組織においても同様の組織特性になっていませんでしょうか?

大東亜戦争が終結して約80年、直接的な戦争は起きていないものの日本を取り巻く国際競争環境は激しさを増し、経済環境は不確実な状況が続いておりますが、日本企業はこれらの環境変化に合わせた最適な戦略を立てて行動できているでしょうか?
この質問に自信を持って「イエス」と答えられる日本人はほとんどいないと思っています。

やはり現代の日本企業や政府などの組織は環境変化に合わせた自己革新ができていないということなのだと思います
では自己革新ができる企業となるためにはどのような取り組みが必要なのでしょうか。
最後に、本書で挙げられている、自己革新組織になるために行うべきことをいくつか紹介したいと思います。

権限委譲と責任の明確化

ある文献によれば日本軍は「責任多く権限なし」と言われていました。

特に不確実な環境下においては、現場の最先端で働く人員への権限委譲を行い、誰にどのような責任があるかを明確化することが必要です。

異端の受け入れ・オープン議論による情報共有

前述の通り、日本軍は作戦に反対を述べる異端者がいても受け入れられることはほとんどありませんでした。
また組織内の発言についても厳しく取り締まられていました。

意見が受け入れられずに同調圧力が働いてしまう組織では、環境変化に迅速に対応する事ができません。

今後の日本組織のメンバーは、意識的に異端者の意見にもしっかりと耳を傾け、多様な視点から結論を出せるような情報共有体制を構築する必要があります。

明確なビジョンの作成と共有

日本軍は、曖昧な戦略によって各人員の意思統一が図れず数多くの作戦に失敗しました。現代の組織でこのようなことを起こさないためには、トップマネジメントが目指す姿(ビジョン)をメンバーに共有することで、組織が目指すゴールを明確化し、メンバー全員がそのゴールに向かうようにする必要があります

終わりに

本日は名著『失敗の本質』を特集させていただきました。

実は、kenzoは本書を何度も読んでいる途中で挫折したことがあります。
なぜなら、各事例研究は大東亜戦争当時の背景なども理解しておかなければ読み進められない部分も多かったからです。
今後失敗の本質を読まれる方は、第1章からまじめに読み進めると事例内容が理解しきれず挫折してしまう可能性があるため、第2章以降の分析から読んでも良いかもしれません。

いずれにしても本書で紹介されている日本軍組織の特徴は、決して日本企業や日本政府にとって他人事ではないと分かったのではないかと思います。

本記事を読んだ皆様が、自分がいる組織を自己革新組織に変革させるために何かしらの取り組みを始めることを期待して本記事を締めくくりたいと思います。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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この記事のライター
渥美 研司

1988年生まれ
2010年から旅行会社にて法人営業を経験。
2019年~2020年までは旅行会社子会社のシンクタンクに出向。
2021年以降、旅行会社本社にて新規事業開発に従事

独学での資格取得ノウハウや読書経験を活かし、多くの人に役立ちたいという想いから独学応援ブログを開設した。

保有資格:
中小企業診断士
総合旅行業務取扱管理者
TOEIC810点(2023年2月5日現在)
SEO検定4級

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