図解『いかなる時代環境でも利益を出す仕組み』

ビジネス書

こんにちは、kenzoです。

2020年の新型コロナウイルスの世界的な感染拡大(以下、コロナ禍)は、多くの企業の業績を悪化させました。この記事を書いている2021年3月現在も感染症の拡大はおさまることなく、多くの企業が苦戦を強いられています。
しかし、そのような状況下でも着実に業績を向上させ続けている企業もまた存在しています。

そんな経済環境の悪化に強い企業の1つが宮城県仙台市に拠点を構えるアイリスオーヤマです。
アイリスオーヤマの2020年度の業績は、売上高前期比38%増の6,900億円、経常利益前期比2.2倍の621億円で、売上高、経常利益ともに過去最高と発表されています。

アイリスオーヤマは、コロナ禍によって需要の増加したマスクやテレワーク商品を販売していたから業績が伸びたのではありません。2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災など、多くの企業が景気悪化に悩まされていた時代も、常に業績を伸ばし続けているのです。

なぜアイリスオーヤマは常に業績を向上させ続けることができるのでしょうか。
その秘密は、アイリスオーヤマ現会長の大山健太郎さんが書いた「いかなる時代環境でも利益を出す仕組み」に書かれておりました。

いかなる時代環境でも利益を出す仕組み

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本書ではかなり具体的な手法が書かれておりますが、この記事ではそのアウトラインを解説していきたいと思います。

著者の紹介

まずは著者の紹介から。
ここでは本書に記載の著者紹介を引用したいと思います。

大山健太郎(おおやま けんたろう)

アイリスオーヤマ会長。1945年生まれ。
大阪で父親が経営していたプラスチック加工の大山ブロー工業所(1991年にアイリスオーヤマに社名変更)を、父の死に伴って1964年、19歳で引き継ぐ。
経営者を56年間と長きにわたり務め、生活用品メーカーからLED照明・家電メーカーに業容拡大。
藍綬褒章受章(2009年5月)、旭日重光章受章(2017年11月)。
2018年会長就任。

日経BP社 「いかなる環境でも利益を出す仕組み」より抜粋

アイリスオーヤマは、もともとは東大阪の「大山ブロー工業所」という、プラスチック製品の下請け加工を担う小規模工場でしたが、そこから少しずつ業容を拡大していき、現在のような「生活提案型企業」として多様な製品を扱う企業になりました

本書のキーメッセージ

著者の大山氏は、本書の後半で次のことを述べています。

本書を通して、私が最も言いたいことは、経営の効率をどの次元で見るか、ということです。目先の効率ではなく、本質的な効率は何か。ニューノーマル時代の経営では、そのことがますます避けては通れない「大命題」として俎上にあがるでしょう。

日経BP社 「いかなる環境でも利益を出す仕組み」より抜粋

このメッセージからも分かるように、アイリスオーヤマでは、一般的に「非効率では?」と思われるような取り組みが多く存在しています。しかし、大山氏は、目先の効率よりも本質的な効率を求めることがニューノーマル時代の経営であると主張しています。

本書ではその「ニューノーマル時代の経営」について製品開発力、市場創造力、瞬発対応力、組織活性力、利益管理力の5つの視点で解説がされています。

それではもう少し中身について詳しく見ていきましょう。

製品開発力

ユーザーイン

一般的な製品開発の考え方として「プロダクトアウト」と「マーケットイン」の考え方があります。

一般的にこれら2つは次のように定義されます。
プロダクトアウト:自社独自の強みを深掘りする視点で製品を開発すること、
マーケットイン:業界や市場のニーズに沿って製品を開発すること、

しかし、アイリスオーヤマでは、これら2つのどちらでもなく、ユーザーの動きをとらまえたユーザーイン型の製品開発が重要視されています
ユーザーインとは、簡単に言えば「製品を使うユーザーが満足するかどうか」を考えることです。

注意点として、自分がユーザーインだと思っていたことが、実はマーケットインの発想になっていることが多い、ということです。
例えばメーカーの営業社員にとって直接の顧客は問屋や小売店であり、問屋や小売店は斬新な新製品よりも安定して売れる製品を扱いたいため、実際のユーザーのニーズとはずれてしまうことが考えられます。

マーケットインの発想に陥らないために、今実施している製品開発は「誰の要望に沿ったものなのか」を考えるようにする必要があります

プレゼン会議

アイリスオーヤマでは、毎週月曜に全部署の責任者が全員集まる「プレゼン会議」という名の開発会議が開かれます。

ここでは、その名の通り、製品開発担当者やマーケティング担当者が新製品に関するプレゼンテーションを行います。

当然ここには大山氏(社長)も出席しており、社長がOKを出せばすぐに本格的な開発がスタートします。
このプレゼン会議の決断の速さが、年間1,000アイテムの新製品を生み出すアイリスオーヤマの事業スピードに直結しています。
なおここでも社長決裁のポイントとして、「ユーザーイン」であるかどうかが重要と述べられています。

市場創造力

メーカーベンダー

新興メーカーが新しい製品を売ろうとするときには「問屋の壁」と「小売の壁」という2つの壁が立ちはだかります。細かな違いはありますが、いずれも「確実に売れそうな製品しか買ってくれない」という壁です。

アイリスオーヤマはこのうちの片方「問屋の壁」を越えるために自らをメーカーベンダーとする道を選びました。メーカーベンダーとは、その名の通りですが、問屋の機能を持った製造業という意味です。
この業態転換によって、ユーザーイン思想で開発された製品を小売店に直接販売ができるようになります。

ただし、単なるメーカー直販とは異なり、メーカーベンダーは、問屋機能を備える必要があるため小売店が希望するような品ぞろえや、小売店の売場における陳列などにも責任が生じます。

当初、社内ではメーカーベンダーへの転換を反対する声もあったようですが、大山氏が推し進める形となりました。
この決断は、問屋へ販路を依存するリスクへの懸念や、メーカーベンダーだからこそできる市場創造力を重視したものでした。

結果、アイリスオーヤマのメーカーベンダーへの転換は、当時の主要取引先であるホームセンター業界との関係性を強化し、順調に売上を伸ばすことができました。

多長根

大山氏は、業界の常識に凝り固まってユーザー目線で考えられないことが日本企業の弱点である、と指摘し、市場を創造する上で経営者に必要なのは「多長根」の考え方であると述べています。
「多長根」とは、多面的、長期的、根本的に物事を捉えるということです。

つまり、自社を○○業と括ってしまい業界内の常識で考えることよりも、「多長根」の考え方に基づき、消費者の目線で本当に必要とされている製品やサービスが何であるのかを考える必要があるということです。

最近のアイリスオーヤマは、なんとコメの企画販売にまで手を広げています。
これは決して無謀な多角化ではなく、あくまでも消費者の本質的なニーズに沿った事業として実施されているものであることが本書から読み取れます。

瞬発対応力

アイリスオーヤマといえば、個人的には、コロナ禍でのいち早いマスクの大量生産、大量販売への対応が思い浮かびます。

多くのマスクメーカーがマスクを増産したくても工場の稼働が追い付かない中で、アイリスオーヤマは需要に対応してマスクの増産体制を敷くことができました。

このアイリスオーヤマの瞬発対応力はどこから生まれてくるのでしょうか。

この体制のカギを握るのが、アイリスオーヤマの「稼働率7割ルール」と「内製化」です。

稼働率7割ルール

その名の通りではありますが、アイリスオーヤマの工場は、常に稼働率が7割になるように運営されています。つまり3割は常に空きスペースです。
なぜ7割かといえば、売上が予測の150%になっても対応できるようにするため、と述べられています。
だからこそ、マスクの需要が急激に増加したとしても、その3割の空きスペースを活用して、すぐに増産体制を敷くことができた、ということです。

一般的な経営の考え方に基づけば、資本効率を最大化するために、工場は常にフル稼働させていることが望ましいようにも思えます。
しかし、それでは需要の急激な増加に対応することができずチャンスを逃してしまうということです。

内製化

アイリスオーヤマの瞬発対応力の理由の1つは工場の3割が空きスペースであることが分かりました。

しかし、コロナ禍においては、中国からの物資が届かなくなったりするなどサプライチェーンの分断もありました。また、新製品の生産をスタートするにあたり、ノウハウがない分野の製品の機械加工など順調に稼働させることに時間がかかるように思えます。


その課題に対し、アイリスオーヤマでは、汎用的な部品製造や機械製造を内製化することでノウハウを積み、外部の発注先に依存しない柔軟性の高い製造体制を実現しています。驚いたことに製品に使用するビスさえも内製しているようです。

「稼働率7割」同様に、一般的な経営の考え方に基づけば、
目先のコストを削減するために、自社で製造するよりも外注するほうがコストが小さい場合は、外注することが望ましいと考えられます。
しかし、大山氏は、外部の安い調達先・加工先に部品や機械加工を依存するのは大きいリスクとあらかじめ見越していたため、安易な外注に頼ることよりも内製化を優先させました

これらの考え方が、アイリスオーヤマの柔軟な生産体制を実現し、他社よりも圧倒的に速いスピードで市場に対応する力を生み出しています。

組織活性力

情報共有

アイリスオーヤマでは、組織内での情報共有を非常に重要視します。

そのため、目的や目標、理念を共有する場である会議は基本的に欠席厳禁とされています。
一般的な会社では「取引先との商談」といった理由であれば、許容されそうなものですが、アイリスオーヤマでは全く違うようです。
会議の欠席には、社長決裁が必要というほどの徹底ぶりです。

また情報共有するためのツールとしてアイリスオーヤマでは「ICジャーナル」を活用しています。これは一般的な会社における日報ですが、日報と異なる点は、事実を羅列するのではなく、入力担当者の意思も含めて入力する点です。
このツールを全員が確認できる仕組みを持つことによってアイリスオーヤマでは、市場の動向や新しい製品のニーズなどをいち早く察知することができます。

利益管理力

開発社員が損益管理

アイリスオーヤマの利益管理の特徴として、開発社員が製品発売以降の3年間利益管理をする点が挙げられます。

一般的な企業では、利益管理は営業担当者が担うことが多いと思います。そうすると営業担当者としては「売れないのは製品が悪いからだ」と開発担当者のせいにしてしまうことがあります。

そういった状況を防ぎ、開発担当者にユーザーイン視点を持たせる意味でも、この仕組みが重要であると大山氏は述べています。

終わりに

今回は、大山健太郎さんの『いかなる時代環境でも利益を出す仕組み』を特集いたしました。

本書に書かれていることは一般的な経営理論に反していることも多いですが、おそらくニューノーマル時代の経営として多くの企業のスタンダードになるかと思われます。

実際の書籍では、アイリスオーヤマが利益を生み出し続けられる仕組みについて、もっと具体的な方法論や考え方も含めて紹介されております。
あくまでもアウトラインとして参考にしていただければ幸甚です。

大変恥ずかしながら、kenzoはこの本を読むまでアイリスオーヤマについては「1つの家電メーカー」としか認識していませんでした。このことを知り合いに話したところ、その知り合いは「え?プラスチックメーカーでしょ?」と話していました。
本書を読んだことによって、どちらの考え方もも正解であり不正解であることが分かりました。

本書内で大山氏が述べている通り、アイリスオーヤマは自社を○○業と括らずに、「生活提案型企業」として、私たちの生活を支えてくれています
この大山氏の思想が多くの消費者、そして多くの企業に届けられることを期待して記事を締めくくりたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

また来週の記事でお会いしましょう。

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この記事のライター
渥美 研司

1988年生まれ
2010年から旅行会社にて法人営業を経験。
2019年~2020年までは旅行会社子会社のシンクタンクに出向。
2021年以降、旅行会社本社にて新規事業開発に従事

独学での資格取得ノウハウや読書経験を活かし、多くの人に役立ちたいという想いから独学応援ブログを開設した。

保有資格:
中小企業診断士
総合旅行業務取扱管理者
TOEIC810点(2023年2月5日現在)
SEO検定4級

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